2020年11月30日月曜日

やさしきけだもの

 けだものは食(たべ)もの恋ひて啼き居たり何といふやさしさぞこれは


斎藤茂吉のこの歌を目にすると、何度も私の足に頭を擦り付け、いつもはあまり出さない大きな声で餌をねだる我が家の"けだもの"の姿が浮かんでしまいます。
食べ物を欲しがる動物に、無垢さや健気さを勝手に投影しているのは私たちの方なのですが、どうしようもなくその存在が救いになることがあります。とても慈愛に満ちた温かな歌…けれども些細と思える情景にまで心震えてしまう作者の"痛み"が読みとれるところが不思議です。

自殺した知人を弔った帰りに動物園に立ち寄って詠んだものだそうですが、そうせずにいられなかった気持ちがすんなりと腑に落ちます。

OP S

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